私は以前、VISAとマスターカードがポートフォリオの4割を占めた時期がありました。(下図参照)
その際、VISAとマスターカードの戦略の違いを調べる中で、なぜApple PayではVISAカードが登録できず、マスターカードは登録できるのかを調べたことがあります。
そのため、タイトルにもある通り、今回のApple PayでVISAカードが対応開始という発表は私のとって、衝撃的なニュースでした。
そこで今回の記事では、VISAがApple Payで使えることになったことについて、VISAがなぜApple Payと提携することになったのか、また、これによりAppleは成長できるのかなど私の所感を述べさせていただきます。
Apple Pay の歴史
Apple Payはアメリカで2014年、日本で2016年にサービスを開始し、現在では58の国と地域で展開しています。(出典:wikipedeia)
そんな、Apple Payは実は、サービス開始以来、VISAブランドのカードを登録することが出来ませんでした。なぜ使えなかったのか、クレジットカードブランドの2大巨頭であるVISAとマスターカードの戦略などを交えご説明します。
VISAとマスターカードの戦略
Apple Pay非対応については、非接触決済の覇権争いという説(VISAタッチ普及の足かせとなるため、Apple Payに対応しなかったという説)が有力ですが、私は別の視点(Apple Payを手数料が高いという視点)で考察していきたいと思います。(Apple Payの手数料が高いことについての参考記事は以下です)
Apple Payのアップルの手数料は0.15%と高めの設定
クレジットカード業界について簡単に説明
VISA、マスターカードは実はクレジットカードを発行していません。
例えば、楽天カードを作る際、顧客は以下から選択することになります。
- VISAブランド
- マスターカードブランド
- JCBブランド
同じ楽天カードなのに3種類あります。
次に、楽天と国際ブランド(VISA、マスターカード、JCB)の役割についてご説明します。
- カード発行
- 店舗とのお金のやり取り(売り上げ代金を店に支払う)
- 顧客とのお金のやり取り(支払い額を顧客から徴収する)
- カード会社に決済インフラを使わせてあげ手数料をもらう
ここでのポイントは、楽天は顧客の利用料金の徴収業務が発生しており、踏み倒しのリスクなどを背負っているということです。
一方で国際ブランドは、楽天カードの利用料の数%の手数料を楽天からもらうだけなので、顧客との直接的なつながりは無いです。まさに”チャリンチャリンビジネス”です。(またおは、こういったビジネスを展開している会社に投資するのが好きです)
戦略の違い
カード発行会社と国際ブランドの違いを説明したところで、国際ブランドの絶対的勝者であるVISAとマスターカードの戦略の違いについてご説明します。
VISA | マスターカード | |
---|---|---|
シェア | 1位 | 2位 |
戦略 | 自社に有利な条件(利益率のいい条件)でしかカード発行会社と契約をしない | 多少手数料が下がっても売上規模の大きいカード発行会社とは積極的に契約 |
戦略例 | Apple Pay(NEW) | Amazonカード コストコカード Apple Pay |
戦略例に示したように、なぜAmazonやコストコカードにマスターカードブランドしかないのかというと、おそらく相当量の取扱高(売上)が見込まれるカードのため、Amazonやコストコ側が、より有利な条件をだしたカード発行会社1社(Amazonカードの発行会社は三井住友カード(株)です)と独占的に契約をするとしたためだと思います。
おそらく、VISAブランドでは有利な条件を提示できなかったものと推測されます。
利益率
では、私がこれまで述べたような戦略通りとなっているのか、2社の利益率(粗利率)の違いを検証しています。(表=年別の粗利率 出典:yahoo finance!)
表からわかる通り、VISAの方が粗利率が4%程度高いことが分かります。つまり、戦略の違いはこれをもって証明までは出来ませんが、決算資料からもある程度読み解くことができます。
(てか、粗利率80%ってどれだけ殿様商売なんだっていう・・・・)
読者の方はたかが4%と思うかもしれませんが、たかが4%と侮ることなかれ、VISAの2020年の売上高は円換算で約2.2兆円です。2.2兆円の4%は880億円です。1%の重みがお分かりいただけると思います。
提携による影響
Appleの業績(ひいては株価)への影響
間違いなく、今回の提携はAppleの業績にはプラスに働くものと想像ができます。
私見ですが、これまでのAppleのやり方から想像するに、Apple側が大幅に条件を緩和したとは考えられません(多分…)
そのため、Appleにとっては、Apple Payの利便性が向上することで、新たな利用者の獲得につながり、取扱高が増加し、それの伴い、Appleに入ってくる手数料収入も増えるという良いことづくめであると思います。
私は、Apple株の株価上昇には、サービス事業の成長が必須であると考えており、その中心にあるのはApple Payであると考えています。そのため、今回の提携はApple株主にとって歓迎すべきことであり、私自身、Appleへの投資について、改めて調べてみようという気持ちになるニュースとなりました。
VISAの業績(ひいては株価)への影響
メリット・デメリットが入れ混じっており、影響が読めません
そんな結論あるかと突っ込みが入りそうですが、今回のニュースは特にApple側にメリットがあったとということを書きたかったので、ご了承ください。
VISAにとっては、これまでApple Payに対応していないという理由で別の国際ブランドのクレジットカードを選択するという”新規顧客を失うという事態“が少なからずあったと思います。今後はそれらをなくすことができますので、その点は大きなメリットとなります。
ただし、近年、Apple Payだけでなく、Google Payやペイパルなど決済サービスの存在感が大きくなっているように感じます。これまでのクレジットカード発行会社が乱立しているという状況であれば国際ブランド各社は強気で行けますが、今後、膨大な取扱高を有するサービスをもつ会社(今回のAppleのような)の力が強くなることは、相手に主導権を握られる可能性があり、VISAにとっては大きなデメリットとなります。
ほかにも理由はございますが、こういったことを懸念して私はVISAへの投資をやめた経緯があります。(VISA株の記事はまたの機会に書きたいとは思っています)
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